2024年8月1日、厚生労働省の専門家部会は、米製薬大手イーライリリーが開発したアルツハイマー病の治療薬「ドナネマブ」の国内での製造販売承認を了承しました。
同様の薬は、2023年9月に厚労省が承認したエーザイと米バイオジェンの「レカネマブ」に次いで2件目となります。今後、厚労相から正式承認を受ける見通しです。
1.本記事のテーマ
- アルツハイマーの最新治療薬「ドナネマブ」とは
- 新薬「ドナネマブ」の投与対象者、「レカネマブ」との比較
- 新薬「ドナネマブ」の金額と保険適用
3.アルツハイマーの最新治療薬「ドナネマブ」とは
アルツハイマー病になった患者の脳には、「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまり、これによって神経細胞が壊れると考えられています。
ドナネマブは2023年9月に国内で承認されたレカネマブと同様に、アルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」を除去して、進行の抑制を目的とする、国内で2例目の薬剤です。
約1,700人人が参加した最終段階の臨床試験では、認知機能などの低下を22%抑える効果が確認されました。病状がより早期のグループでは35%の抑制効果がありました。
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240801-OYT1T50206/
なお、副作用として脳の微小出血や腫れがみられたとの報告です。
4.新薬「ドナネマブ」の投与対象者、「レカネマブ」との比較
投与対象者
対象は軽度認知症と、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の人を含む、アルツハイマー病の早期の患者です。壊れた神経細胞の再生は難しく、症状が進んだ人は対象となっておりません。
レカネマブとの比較
- ドナネマブは副作用の確認のために5回のMRIスキャンが必要だが、レカネマブは4回で済む。
- 米国の薬価を比較するとレカネマブよりドナネマブの方が高価であるが、アミロイドの除去を確認できれば投与は終了できる。
- ドナネマブの投与頻度は月1回。投与期間は原則18カ月までで完了。
- レカネマブの投与頻度は2週間に1回。また、十分にアミロイドが除去された後も、治療の継続が必要とされる。
イーライリリーによると、約17%の患者が6カ月の治療後にドナネマブの使用を中止でき、47%が1年以内に、69%が18カ月以内に中止できたと報告されています。
さらに、ドナネマブの使用を中止した後も認知機能の低下が継続的に遅延したと報告されている。
5.新薬「ドナネマブ」の金額と保険適用
米食品医薬品局(FDA)はドナネマブを2024年7月に承認しています。
「ドナネマブ」は2023年8月に厚労省に承認申請が出され、米国では2034年7月2日に承認されていました。
米国での年間治療費は約3万2,000ドル(約480万円)となっています。
日本での薬価算定は、厚労相の諮問機関・中央社会保険医療協議会で検討されるます。薬価の算定には製造販売承認から原則60日から90日ほどかかるとされています。
レカネマブ1年分の費用は約2万6000ドル(約420万2000円)となるが、イーライリリーのアン・ホワイト執行副社長はニューヨーク・タイムズに対し、ドナネマブの高額な価格設定は、十分なアミロイドが除去された後に患者が治療を中止できるという期待を反映したものだと述べた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA314DJ0R30C24A7000000/