歯を生やす「歯生え薬」の実用化に、北野病院(大阪市)や京都大発のベンチャー「トレジェムバイオファーマ」(京都市)などのチームが取り組んでいます!
現時点で対象となるのは、生まれつき一部の歯が生えない「先天性無歯症」を患っている患者さん向けであり、2030年の実用化を目指しています。
これまで、平成30年には歯の数が少ないマウスに薬を投与し、歯を生やすことに成功しました。人と同様、乳歯と永久歯があるフェレットでは、永久歯の内側から新たな歯が生えたとの報告があります。
将来的には虫歯などで歯を失った人にも応用したい考えとのことです。これが実現できたらとてもうれしいですね。
今回は、現時点での取り組みと、発表されている研究内容を紹介します。
1.本記事のテーマ
- 先天性無歯症とは
- 今後の治験について
- 将来の展望について
2.先天性無歯症とは
生まれつき歯の種類を問わず1本でも歯が欠損している疾患を先天性無歯症と言います。
先天性無歯症は、先天異常症候群の症状として出現したものや、非症候性(病気によるものではない)のものがあり、欠損している歯の数や、乳歯/永久歯、切歯/犬歯/小臼歯等の種類や、上下顎、左右等の歯の萌出場所やその原因の遺伝子の違いなどによっても複数の様々な病気から起こると考えられています。
その中でも、6本以上の歯が欠損している場合は、遺伝が大きく関係していると考えられ、その確率は、全人口の0.1%と言われています。
先天性無歯症とは
公益財団法人田附興風会医学研究所
3.今後の治験について
北野病院によると、初期段階の治験は2024年9月から2025年8月までを予定しており、薬剤を健常者に点滴で投与し、安全性を確認していく方向です。
治験の対象者は30~64歳の男性30人。薬の効果が発現して歯が生えてしまっても問題の無いように、奥歯が1本以上無いことを条件としています。現状は動物実験の過程ですが、これまで大きな副作用は確認されていないとのことです。
その次のステップとしては、先天性無歯症の患者さんを対象に、実際に北野病院で投与し効果を検証していくとのことです。この段階の治験対象者は、2~7歳の先天的に4本以上の歯が無い人を想定しています。
薬剤は、歯の成長を抑制する働きがある「USAG―1」というたんぱく質の機能を失わせるものです。先天性の疾患だけでなく、将来的には虫歯や外傷などで後天的に歯を失った人に歯を生やすことができる可能性もあるとしてます。
【速報】世界初「歯が生える薬」の治験開始「虫歯」で「永久歯」失っても安心の未来訪れる可能性
関西テレビ
4.将来の展望について
トレジェム・バイオファーマ株式会社は自社のホームページで以下の展望を記載しています。
- 歯の欠損に対する自己歯再生薬(いわゆる歯生え薬)を開発し、自分の歯で長く咬めるようにすることで健康寿命の延伸に貢献したいと考えている。
- 大人になってからのいわゆる虫歯や歯周病によって、1本以上の歯を失っている人は、日本では60歳以上で年間4,300万人を超えています。
- 後天性の歯の欠損に対しては永久歯の次の歯の芽(第三歯堤)を成長させることにより、永久歯の次の歯が生えることによる歯の再生を目指しています。