会社を退職することはとても簡単です。
労基法上は、2週間以上前に1枚の退職願(退職届)を提出することによって、誰でも簡単に仕事を辞めることができます。
しかし、安易に退職に踏み切ってはいけません!退職前に済ませる退職に関する手続がたくさんあります。そして、その手続きを済ませないと、後々とても面倒な処理に、時間と労力を取られてしまいます。
私はこれまでに、一日でも早く退職したいと思うあまり、退職前に必要な手続きが不足し、かつ、退職後の生活イメージの甘さが重なり、退職後にとても後悔することがいくつもありました。
今回は、こまかな手続きは除き、ポイントとして「これだけは必ず意識してほしい」と言う点を整理しました。
1.本記事のテーマ
- 現在就業している会社で、退職前に行う4つの処理
- 退職前に考える、退職後の生活に必要な4つの準備
- 退職から再就職までの生活
2.著者の経験
これまでの主な職歴は、人材サービス業とコンサル業での勤務です。
人材サービス業では14年間勤務し、約3,500名の求職者のみなさんへお仕事をご紹介してきました。また、コンサル業では7年間人事業務に携わり、新卒や中途採用、教育・研修などを行ってきました。
転職や就職情報のほか、面接時の雑談や、お仕事場での日常的なコミュニケーションツールとして、日々のニュースやトレンドの情報も、お伝えしていきます。
3.現在就業している会社で、退職前に行う4つの処理

退職してしまうと、今勤めている会社と改めて接点を持つことは、手間もさることながら、精神的にも苦痛です。
何よりも退職前に処理をしておかないと、退職後に影響がでてしまうことがあります。
次の項目については、必ず退職前に手続きを完了しましょう。
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(1)退職日、有給消化について
必ず就業規則の「退職」関係の条文を確認しましょう。
一般的には退職日の2週間前に、退職願(退職届)の提出を求める条文が記載されています。
ただし、このタイミングで退職届を提出しても引継ぎや残有給の処理を考えると、それらを処理するための日数が残っていません。
少なくとも退職日から、1.有給消化のための残日数(最大2年分の40日)、2.引継ぎ期間(約1か月)を逆算して退職届の提出日を決定しましょう。
私のこれまでの流れでは、やはり退職の意向を伝えてから、3か月後くらいの退職日が現実的です。
- 現在の有給残日数を確認し、退職日から逆算して実勤務終了日を想定する。
- 実勤務日終了日から、引継ぎに要する期間を逆算する。
- 上記から退職を伝える日程を決める。
(2)提出した書類の返却依頼、退職後の必要書類の依頼
退職時には、入社時に提出している各書類を返却してもらうことが必要です。
経験の浅い人事担当者の場合は、実際にかなり返却漏れがでますので、自分で必ず確認するようにしましょう。
- 年金手帳(勤務先に預けている場合)の受け取り
- 雇用保険被保険者証(勤務先に預けている場合)の受け取り
- 雇用保険被保険者離職票の受け取り
こちらは主に、退職後に失業保険等を申請する場合に必要になります。
退職後に郵送されるケースが大半です。実際に手元に届くまでは、退職後2週間〜3週間くらい時間がかかります。 - 源泉徴収票の受け取り
ご存じのとおり、その年の1月~退職日までの給与総額が明記された書類です。次の転職先で年末調整を行う際などに必要になります。
退職後の最終給与支給日以降に、郵送されるケースが大半です。
ただし、残業代や立替金精算などは、本給と精算・支払日が異なるケース(1ヶ月後など)が多い事から、最終的な精算などを終え、会社側の未払いが無くなった時点で処理が進みます。
このため、源泉徴収票の受け取りは、最終給与(残業代や立て替え金など)を受け取った以降、2〜3週間後の受け取りイメージです。
例)月末締め・翌月末払いの会社の場合
【3月末退職の場合】
①給与:3月1日~3月31日分→4月末支給
②立替金等:3月1日~3月31日立替分→4月15日締め→5月末日支給(給与と一緒に振り込み)
※この場合の源泉徴収票は、5月末日の最終精算終了後から2~3週間後の手元に届くイメージになります。 - 健康保険被保険者資喪失の受け取り
こちらは主に、健康保険の切り替え手続きをする場合に必要になります。
(3)借上住宅、引越費用、交通費などの負担費用の確認
転勤などにより、採用地から離れ借上住宅などの費用負担を受けているケースも多いと思います。
就業規則を事前に確認しましょう。自己都合退職の場合、様々な費用の負担を求められるケースがあります。
ここは、それぞれの会社により福利厚生に差が生じる部分ですので、急な出費が生じる可能性があります。転職する際には必ず事前に確認しましょう。
注意点は以前に辞めた方の話を聞く事です。良い面もありますが、その方は当時のルール上の処理であり、また、何かプラスに加味された個別的な状況がある場合もあります。不明な点があれば人事に直接確認しましょう。
- 就業規則の福利厚生にかかる借上住宅などの条文を確認する
- 退去にあたっての費用処理について確認する
自己都合退職においては、現状回復費用、ハウスクリーニング費用などかかる費用を求められるケースがあります。
ハウスクリーニングでも3万円前後、その他壁の変色、部屋の破損、予備キーの紛失などがあると1場合によっては、10万円前後の個人負担が発生する場合もあります。 - 交通費精算の確認する
勤めている会社にもよりますが、前払いとして半年分の交通費を事前に受領しているケースも多いとおもいます。
定期券の購入を前提とされている場合、特に注意が必要です。
退職日以降の残期間について、定期券を解約して残高の返納を求められるケースも生じます。きちんと定期券を購入していれば精算で済みますが、購入していない場合は、こちたもある意味突然の出費に近い返金が生じます。 - 採用地までの転居費用
会社の業務命令により採用地から転勤(異動)した場合、退職にあたって、採用地に戻るための転居費用などを求めることができる場合もあります。
指定業者やルールなども存在しますので、引越処理を進める前に必ず就業規則の転勤規定などを確認しましょう。
例として、採用地は仙台であったが、業務命令の転勤で福岡に転居した。福岡で退職する場合、採用地である仙台までの引っ越し費用を請求することが可能な場合もあります。
(4)会社からの貸与品の返却
これは、後々の面倒を避けるために、細かなものでも自分で判断せず、貸与品は全て返却しましょう。
代表的なものを以下にまとめました。
- 健康保険証の返却
- PC、携帯電話、タブレットの返却
- 社員証、自身の名刺、社章の返却
- 業務上で入手した資料、名刺、その他情報類の返却、処分
- 経費購入した備品、消耗品類の返却
- カーシェア、駐車場カードの返却
- 事務所のカギ、セキュリティーカード等の返却
- 制服、靴など特別な支給品の返却
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4.退職前に考える、退職後の生活に必要な4つの準備

退職にあたり、次の職場が決まっている方、そうでない方により対応は大きく変わってきます。
次の仕事が決まっていない方は、基本的には失業保険の受給申請を行うことになると思いますので、手続きについては最寄りのハローワーク窓口で、申請方法の確認をお願いいたします。
私は、次の仕事を決めてから退職することを前提としておりました。しかし、その上でもこうしておけば良かったという点をまとめてみました。
(1)当面の生活費・生活資金を確保する
転職してすぐには勤務歴も浅いことから、クレジットカード等の審査も厳しくなります。
生活費などの資金面で不安がある場合は、必ず就業中に2〜3か月分程度の生活資金を、事前に準備できるようにしましょう。
私は、節約には限りもあるので、在籍中に少し余力資金を蓄えておけば良かったと本当に後悔しました。
また、転職活動費用(交通費、宿泊費、生活費)についても、面接場所が遠方であったりする場合は、旅費などの出費が生じます。
ここで注意したいのは、安易にクレジットカードで処理することは危険です。
40代の転職活動は特に長期戦を前提とした活動になります。転職活動に係る費用の他、家族がいる場合はその生活費も在職中と同じ金額が発生します。
当然ですが、資金的な余裕がなくなってくると、平常の思考を保つことが難しくなります。結果、転職活動を急がなければならず、不本意な転職につながるリスクが高まります。
ハローワークで失業手当を受給するにしても、自己都合退職の場合は3か月以降になります。また、需給額も6割になるため、これまでの生活を維持できる金額ではありません。
私は、こうした資金難が怖かったため、独身時代の最初の転職以外は全て、次の転職先を決めてから退職することを自身の掟としていました。本当に辞めたいという気持ちが先行してしまいますが、現実的な生活を考えることは重要です。
次の転職先さえ決まっていれば、有給消化期間に思いっきり羽を伸ばすことができます。当然、有給消化期間は満額の給与支給なので、途切れのない収入を維持できます。
また、慶弔関係(結婚式、葬式など)の出費も突然訪れます。突発的に何かがあっても対応できるように、余剰資金を手元に置けるように意識しましょう。
(2)車の購入について
実体験ですが、退職する前の有給消化期間中に、突然車が故障で廃車になりました。
次の転職先は決まっていたのですが、本当に突然で困惑してしまいました。それまでに確かに壊そうな予兆は十分にあったのですが。。。
こういったケースもあるので、上述の生活資金同様、少しでも車両の買い替えなどが想定される場合は、退職前に購入を十分に検討し、転職活動に備えていくことがおススメです。
現在は買い取りなどもまとめて査定ができるサイトもあります。私はこういうシステムをあまり知らず、これまでを振り返ると、相当な金額を損してきたのだなと思っています。
ある時は、ディーラーで下取り7万円ほどの値引きを受け買い替えましたが、後に買取業者へ依頼していたら70~80万円程度だったということ知った時は愕然としました。もちろんそのディーラーの車種は、二度と購入していません(笑)
業者によって見積金額はかなり変わりますので、損をしないためにも是非事前に時間をかけて検討した方が良いと思います。
場合によっては、当面車の所有について必要のないケースもあると思います。
その時は思い切って所有車を売却し、カーシェアなどのサービス利用を検討した場合が良いケースもあります。
(3)転居費用について
自宅などに戻られる場合を除き、新しく住居を見つけることが必要になります。
次の転職先が決まっている場合は、転職先と入居費用の負担について確認し、入社日まで処理を進めていきましょう。中途入社の場合は、十分に交渉が可能です。
相手も来てほしいという気持ちがあるので、相談自体は全く問題ありません。遠慮せずに転居費用については確認するべきです。
一方、次の転職先が決まっておらず、退職にあたり新たに住居を借りる必要が場合は、上述の生活資金の確保と同様に、入居審査が難しくなるケースや、転居費用の捻出が難しくなるケースがあります。
この場合は、当面の生活資金と転居費用の二重苦が想定されます。
簡単に審査が通りやすいクレジットカードや消費者金融もありますが、いずれ「借金」です。安易な借金は退職後の生活を確実に締め付けます。
自己破産などにおちいりやすいタイミングでもありますので、私は、在職中の貯蓄をお勧めします。
仮にもう退職すると考えれば、少々副業で深夜労働などをしても、もう問題ないと割り切ります!
以外に、新しい自分を発見することがあるかもしれません(^^)
また、引越業者も車両と同様に、一括見積を依頼することができます。実施に私も利用させていただきました。
かなり便利だったなという実感がありましたので、必要の際は検討してください。
引越し屋
(4)住民税について
住民税は前年の所得に応じて、当年の6月から翌年の5月までの間に一定額を支払う仕組みです。
退職して収入が全くない状況でも、支払い義務は発生します。
前職の年収が高く、新しい職場の年収が低い場合は、現在の年収に見合わない住民税の控除額が発生します。私自身も収入差が生じた転職の時は、この1年間がとても大変でした。
退職するにあたり、主に以下の3通りの納付方法があります。
- 退職時に、5月分までの住民税を一括で控除してもらう方法
退職前に会社と話し、最後の給与から次の5月までの住民税を、一括で控除してもらうように依頼する。 - 特別控除(給与天引)を継続する方法
退職から間をあけず転職先が決まっている場合、翌月以降も新しい就業先で特別控除(給与からの天
引き処理)を継続してもらえる場合があります。
その際は現在の就業先の人事へここまで住民税を支払っているといった証明書をお願いします。その証明書を転職先の人事へ提出し、特別徴収の引継ぎ処理をしてもらいましょう。
※転職先の企業が行ってくれいないケースも普通にありますので、必ず確認をしましょう。 - 3.就業先が決まっていない場合、行政から納付書が送られてくるので、自身で別途納付する。

5.退職から再就職までの生活

次の転職先を必ず決めてから退職する私にとっても、盲点でとても困ったあったことがあります。
それは、給料日の算定基準(支給日)による、給与振込日の想定違いでした。
実際の例としては、転職前の勤務先は当月末締めの当月25日払いの給与でした。一方、転職先は当月末締めの翌月25日払いの給与でした。
言葉では難しいので、実例をあげると、以下のような状況が生じました。
別途、転職前の会社で退職金などの支給があればまだ何とかなりますが、何もない場合は本当に大変です。
私にとっては全く盲点であったため、皆さんにも是非注意をしてほしいポイントです。
