近年、クマが人里に出現し危害を加えるニュースが増えていますが、クマを射殺することができない理由や、法律的に射殺が禁止されている他の動物について考察します。
1.本記事のテーマ
- クマを射殺できない理由
- クマを射殺、他の方法で殺した場合の罰則
- 熊被害時の正当防衛について
- 法律的に射殺が禁止されている他の身近な動物
2.クマを射殺できない理由
- 1.鳥獣保護法の指定動物になっている。
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この法律により、クマは人に危害を加えるおそれのある危険な動物(特定動物)として指定されています。
「保護動物」ではありませんが、定められた「期間・場所・猟の方法」以外では、むやみに射殺することはできません。 - 2.生態系への影響
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クマは生態系において重要な役割を果たしており、その個体数が減少すると生態系全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
特にヒグマやツキノワグマは、日本国内で生息する重要な種とされています - 3.社会的意識
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クマを射殺することには社会的な反発が伴います。多くの人々が野生動物の保護を支持しており、無闇な射殺行為は避けるべきとされています。
このため、自治体や関係機関は、クマとの共存を目指す方策を模索しています。例えば、物理的なバリア(電気柵など)を設置したり、地域住民への教育を行ったりすることで、クマの出没を防ぐ努力が続けられています4。
- 4.特定鳥獣保護管理計画
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環境省は、クマ類の保護・管理を進めるために特定鳥獣保護管理計画を策定しています。
この計画では、地域ごとの個体数や生息状況に応じた適切な管理方法が求められています。
【熊以外の代表的な特定動物】
トラ: 生態系の頂点捕食者として重要であり、その個体数が減少しているため保護されています。
ライオン: 同様に生態系における重要な役割を果たし、狩猟や生息地の喪失によって脅かされています。
ワニ: 環境保全の観点から重要であり、特に絶滅危惧種として指定されているものが多いです。
チーター: 狩猟圧や生息地の破壊により個体数が減少しており、保護が必要です。
オオカミ: 生態系のバランスを保つために重要であり、個体数が減少しているため保護されています。
ニホンザル: 日本固有種であり、生息地の減少や人間との接触による影響から保護されています。
3.クマを射殺、他の方法で殺した場合の罰則
市街地に出没したクマを射殺することは、日本の法律において厳しく制限されています。
特に、クマは特定動物として保護されており、無許可での射殺は原則として禁止されています。
射殺に関する法律
- 鳥獣保護法
現在、鳥獣保護法では市街地や住宅地での猟銃使用が禁止されていますが、特例として人身被害のおそれがある場合には警察官の指示なしで猟銃を使用できる方針案が検討されています。 - 警察官職務執行法
警察官が人命に危険が及ぶと判断した場合、ハンターに対して猟銃を使用してクマを駆除するよう命じることができます。
射殺に関する罰則
- 無許可射殺
無許可でクマを射殺した場合、動物愛護管理法や鳥獣保護法に基づき、罰金や懲役刑が科せられる可能性があります。
具体的には、動物愛護管理法第44条により、無許可で特定動物を殺傷した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることがあります。 - 危険行為による罰則
市街地での猟銃使用は危険性が高いため、適切な手続きを踏まずに行った場合には、さらに厳しい罰則が適用される可能性があります。
4.熊被害時の正当防衛について
日本におけるクマに対する正当防衛は、特定の条件下で認められています。
以下にその詳細を説明します。
- 正当防衛の定義
日本の刑法第36条では、自己または他人の生命や身体に対する現在の危険を排除するために行われた行為は、正当防衛として認められるとされています。
このため、クマが人間に危害を加えようとした場合、その危険を排除するためにクマを射殺することが正当防衛として認められる可能性があります。 - 過剰防衛のリスク
行為が過剰であると判断される場合には、過剰防衛として処罰される可能性があります。
過剰防衛とは、必要以上の力を用いて相手を攻撃することを指し、この場合には刑事責任が問われることになります。 - 具体的な事例
例えば、クマが人里に出没し、人間に対して攻撃的な行動を取った場合、その場で自衛のために射殺した場合には正当防衛が成立する可能性があります。
しかし、その際には周囲の状況や行動が重要視されます。
もしクマが逃げている状況で射殺した場合などは、正当防衛として認められない可能性があります。 - 法律的手続き
クマを射殺した場合、その行為が正当防衛であったかどうかは、警察や司法によって判断されます。
適切な手続きを踏まずに射殺した場合には、動物愛護管理法や鳥獣保護法に基づく罰則が科せられることもあります。
5.法律的に射殺が禁止されている他の身近な動物
日本では特定の動物が法律によって保護されています。例えば、イヌやネコなどのペットはもちろん、野生動物であるタヌキやアナグマも保護対象です。
これらの動物は、生態系のバランスを保つために重要であり、不必要な捕獲や射殺は法律で禁じられています。
また、これらの動物に対しても社会的な意識が高まっており、無駄な殺傷行為は避けるべきとされています。特に都市部では、人間と野生動物との共存が求められており、そのためには適切な管理と教育が必要です。