現在の日本においては、安楽死・尊厳死は合法化されておりません。
もし、患者本人が真摯に死を望んでいたとしても、患者の要望に基づいて殺害し、または自ら命を絶つのを援助する行為は、自殺関与・同意殺人罪(刑法 202 条)に該当します。さらに、患者本人が死を望んでいたとは認められないような場合には、殺人罪(刑法 199 条)が適用され処罰されます。
自分自身も年齢を重ねるにつれ、知人や親族などがなくなるケースが多くなりました。そして、少しずつ「死」に対する不安と、「終わり方」を意識するようになりました。
もし、自分自身が不治の病のかかり、苦しい嫌味や絶望感が続き、回復の見込みがない前提であれば、自ら死を選ぶことは全く普通の考えだと感じます。自分自身の苦しみのほか、家族や恋人などにかける苦しみを思うとなおさらです。
日本では安楽死は認めらておらず、他国での安楽死報道や法改正が目に入りますが、海外も決して簡単ではないことがわかりました。
今回は、少し前にスイスで自ら安楽死を選択された方の記事を読み、安楽死についての現状をまとめてみました。心が苦しくなる問題ですが、お時間があればご覧ください。
1.本記事のテーマ
- 安楽死とは
- 安楽死の合法化されている国々
- 安楽死にかかる費用
- 日本尊厳死協会とは
2.著者の経験
これまでの主な職歴は、人材サービス業とコンサル業での勤務です。
人材サービス業では14年間勤務し、約3,500名の求職者のみなさんへお仕事をご紹介してきました。また、コンサル業では7年間人事業務に携わり、新卒や中途採用、教育・研修などを行ってきました。
転職や就職情報のほか、面接時の雑談や、お仕事場での日常的なコミュニケーションツールとして、日々のニュースやトレンドの情報も、お伝えしていきます。
3.安楽死とは
初めに、「安楽死」という文言と概念について整理したいと思います。
これには国際的にも正式な定義はなく、類似するようなニュアンスで使われている言葉に1.安楽死、2.尊厳死、3.医師幇助(ほうじょ自殺)、の3種類があります。
しかし、それぞれ定義が決まっていないため、専門家でも正式な分類ができていないのが現状です。ここでは、まずは大きく理解を深めるために、簡単に整理をしたいと思います。
(1)安楽死とは
安楽死とは、人または動物に対して苦痛を与えずに、死に至らせることを意味します。一般的に、医師が終末期患者に対して薬物等を注射し処置することで、患者を死亡させること意味します。
こちらは、医師が直接的に死に対して処置をすることであり、積極的安楽死とも分類されることもあり、現在の日本では基本的に違法と考えられています。
(2)尊厳死とは
尊厳死とは、人間が人間としての尊厳 を保って死に臨むことであり、インフォームド・コンセント(十分な情報を得た上で、患者さんが判断すること)のひとつとされています。
一般的には終末期の人に、実施しなければ死に至ることが予想される治療や措置を、患者本人が理解したうえで差し控える、あるいは中止することで、患者を死亡させることを意味します。
たとえば人工呼吸器や胃瘻(お腹にチューブを通して栄養を送る方法)、人工透析などを本人が断り、延命措置を終了する場合です。
安楽死と大きく異なるのは、尊厳死は現在の終末期医療においてすでに選択肢のひとつとされており、日常的に行われている行為という点です。
(3)医師幇助(ほうじょ)自殺とは
「安楽死」と比較的近い意味のため同義的にと称されるのが「医師幇助自殺」です。
以前までは、自殺目的で使用することを前提として、医師が処方した薬物を患者自身が飲み込んで、生命を絶つことを意味していました。
しかし、それでは重度の患者が飲み込めず死に至れないという意見もあり、近年は医師が入れた点滴のストッパーを患者が外すというような、より安楽死に近い方法が行われています。
ただし、前述のとおり安楽死は日本では認められていないことから、患者自身の意思による「自殺」であることの証明として、ストッパーを外すという最後の行為は、患者自身によって行われなければならない点が重要です。
4.安楽死が合法化されている国々
医師による安楽死(医師幇助自殺)を認める国・地域がここ10年で増加しています。2023年時点では、13の国々で安楽死が合法化されています。
合法化に至るまではセンシティブな内容であるがゆえ、各国ともに長い年月をかけ、宗教的な問題や倫理感などの問題を含め、協議し決定してきた経過があります。
ただし、安楽死(医師幇助自殺)を受けるには厳しい条件をクリアしなければなりません。多くの国では、対象は不治の病を患う成人に限られています。さらに、そのうち未成年者にも認めているのはオランダとベルギーの2か国のみという現状です。
また、精神疾患を持つ人への安楽死(医師幇助自殺)も厳しく制限されています。精神疾患は直ちに生命を脅かす病気とはみなされないためです。また多くの国では正常な判断能力が条件の1つになっていることも理由のひとつです。
精神疾患患者を認定している国はごく少数ですが、カナダ・ベルギーは精神疾患患者への安楽死(医師幇助自殺)を解禁しています。
(1)安楽死が合法化されている国
- スイス( 1942年)
- アメリカ合衆国(オレゴン州 1994年、ワシントン州 2009年、モンタナ州 2009年、バーモント州 2013年、ニューメキシコ州 2014年、カリフォルニア州 2015年)
- コロンビア(2014年)
- オランダ (2001年)
- ベルギー (2002年)
- ルクセンブルク ( 2008年)
- カナダ (2016年)
- オーストラリア ( 2022年)
- イタリア (2019年)
- ドイツ (2020年)
- スペイン ( 2021年)
- ニュージーランド ( 2021年)
- オーストリア (2022年)
- ポルトガル (2023年)
(2)安楽死が合法化されている国の実情
安楽死が合法化されいる国でも、自分の手で最後の処置を行いたくないという医師は少なくありません。これまで、患者を救うことに全力を向けてきた医師の純粋な気持ちだと思います。
そこでベルギーをはじめ多くの法律で設けられているのが「良心条項」という項目です。良心条項とは、安楽死に賛同しない医師は、その処置について直接従事しなくとも良いとする法律です。
ただし、患者から依頼を受けての安楽死を拒否する場合、前述のベルギーでは患者やその近親者が指定する別の医師に内容を伝達しなければなりません。その他、カナダや米国でも州によっては同様に他の医療機関を紹介するか、情報を提供することが義務付けられており、患者の安楽死を最後まで尊重する義務が課されます。
こうしたことから、死に加担しなければならない法律的な状況と、個々の医師が持つ宗教的信条や道徳観(良心の権利など)が相反する場面が医療現場で発生し、現在も議論は継続しています。
5.安楽死にかかる費用
結論として、日本では安楽死が認められていないため、上述の国々で安楽死を受け入れていただく方法しかありません。
しかし、現実として外国人の安楽死を受け入れているのは「スイス」だけです。他の国で安楽死を望む場合は外国籍の入手が必要になります。
費用は1,500,000円~2,000,000円と言われています。また、最低限の英語のスキル、通訳などが必要とされます。
なお、日本人がスイスで安楽死を行うためには、費用とは別の「語学力」が大きなハードルになります。
安楽死を認定する団体側は、申請者が死期を早めたい理由を慎重に診断します。
具体的には、患者が耐えがたい痛みを抱えているか、その痛みは永続的なものか、などが主な判断材料になります。その際、しっかりと死期を早めたい理由について、本人が「英語もしくはドイツ語」で、説明や意思を相手に伝えるための語学力が必要になります。
経済的に余裕があっても、この語学力(伝達能力)がなければ、安楽死を選択することはできません。
また、上述のとおり、自ら命を絶ちたいという理由では受け入れてもらうことはできません。あくまでも末期の症状であることが前提であり、かつ本人の意思が明確に存在する場合に限られます。
6.日本尊厳死協会
日本においては、 尊厳死に関する法律はまだありません。
しかし、終末期での延命措置中止を選択する自己決定権は、憲法が保障する基本的人権の一つである幸福追求権(憲法13条)に含まれるとの考えが一般的になっています。
その中、尊厳死にかかる意思を生存しているうちに本人から預かり、万が一の際に、その意思を医療機関に伝達する制度をビジネスとした「日本尊厳死協会」という組織があります。
(1)日本尊厳死協会の設立目的
日本尊厳死協会は、1976年1月に産婦人科医で、国会議員でもあった故太田典礼氏を中心に医師や法律家、学者、政治家などが集まって設立されました。
自分の病気が治る見込みがなく死期が迫ってきたときに、延命治療を断るという死のありかたを選ぶ権利を持ち、それを社会に認めてもらうことが目的です。
設立から40年以上が経ち、終末期に対する社会の認識も変わりつつあり、延命治療を望まない人が多数になっています。今後の目的は、そういった人たちにリビング・ウイルの提示という方法をお伝えすることにあります。
(2)リビング・ウイルとは?
日本尊厳死協会は、治る見込みのない病態に陥り、死期が迫ったときに延命治療を断る「リビング・ウイル」(人生の最終段階における事前指示書)を登録管理しています。
各人が署名したリビング・ウイルを医師に提示すれば、多くの場合、延命治療を施されないことになります。
人工呼吸器や胃ろうなどによって「生かされる」のではなく、安らかで自然な死を迎えるために、元気なうちに作成する人が多いですが、病を患って自然な死を望む人が署名するケースも増えています。
- 死期が迫っていたり、意識のない状態が長く続いた場合は延命措置を拒否する
- 苦痛を和らげる措置は最大限に実施してほしい
- 私のケアに関わる方は、以上の2点を繰り返し話し合い、私の希望をかなえてほしい
延命治療を中止するだけでなく、痛みや苦痛などを取り除いて安らかな最後を迎えたいと願っている人が少なくありません。
(3)会員数の推移
日本尊厳死協会の会員は、設立26年目の02年末には10万人を超える団体になっております。会員の約80%が65歳以上ですが、自然な死を求める考えに共鳴して、多くの若い人たちも会員になっています。
1992年に日本医師会、1994年に日本学術会議が尊厳死を積極的に認めると公表したことは、画期的なことでした。
(4)会員数の推移
取寄せた『入会のご案内』に同封されている『リビング・ウイル』に、必要事項を記入してください。ご夫婦の場合は、リビング・ウイルはそれぞれ1通ずつ必要です。
署名した「リビング・ウイル」を同封の返信用封筒に入れて協会事務局に郵送してください。(84円切手で届きます)
「払込取扱票」を切り離し、金額とご依頼人情報を記入の上、郵便局でお払い込みください。受け取った受領書は大切に保管してください。
※2014年4月よりコンビニ払いが可能となりました。ただし、入会時の払い込みは郵便局になります
協会で「書類」と「年会費」の払い込みが確認できましたら、会員として登録し、リビング・ウイルの原本を協会で大切に保管します。
会員証1枚と、リビング・ウイルの原本証明付コピー2枚(原本証明付き)を返送しますので、保管してください
会員証は、健康保険証とともに財布やカードホルダーに入れて身につけておくことをお勧めします。
リビング・ウイルは、親しい親族や友人に渡しておくと、ご自身の意識がない場合でも、親族や友人が医療機関に提示してくれるよう話しておきましょう。
(5)会費について
会員には『正会員』と「終身会員」があります。会員資格としてはまったく同じですが、会費の納め方に違いがあります。正会員は会費を毎年納めますが、終身会員は一括して払い込みます。
- 正会員 2,000円/一人
- 終身会員 70,000円/一人
※年会費を前払いすることもできますが、一旦お預かりした会費は返金できませんので、ご注意ください
協会について
公益財団法人 日本尊厳死協会 公益財団法人日本尊厳死協会 (songenshi-kyokai.or.jp)