2024年、52歳を迎える放送作家の「鈴木おさむ」さんが、32年間続けられた放送作家としての仕事の幕を閉じられることになりました。
そのきっかけが「ソフト老害」でした。
「ソフト老害」は鈴木おさむさんの造語です。キャリアを積まれた中、現場における自分の一言によって、若者たちが必死に考えてきたことを妨害する、「老害」になっていたと気づいたことが引退のきっかけでした。
40代の転職において、今回取り上げられた「ソフト老害」という新しいキーワードは重要です。今後、どのような言葉の使われ方になるのかは定かではありません。
しかし、転職活動における面接や、転職後の勤務先での言動には、これまで以上に配慮が必要になることが想定されます。
今回は「ソフト老害」というキーワードが顕在化した背景を抑えること、そして、今後の対策について考えていきたいと思います。
- 「ソフト老害」ってなに?
- 「ソフト老害」が及ぼす影響はどういうものがあるの?
- 若い世代、社会の反応はどうなの?
- 30代、40代がこれから気を付けるポイントは何
1.本記事のテーマ
- 老害とは
- ソフト老害とは
- ソフト老害化の考え方と自己対策
- まとめ
2.著者の経験
これまでの主な職歴は、人材サービス業とコンサル業での勤務です。
人材サービス業では14年間勤務し、約3,500名の求職者のみなさんへお仕事をご紹介してきました。また、コンサル業では7年間人事業務に携わり、新卒や中途採用、教育・研修などを行ってきました。
転職や就職情報のほか、面接時の雑談や、お仕事場での日常的なコミュニケーションツールとして、日々のニュースやトレンドの情報も、お伝えしていきます。
3.老害とは
(1)従来の老害の定義
辞書的な意味としては、「老齢による弊害」のことを指します。年齢を重ね高齢になるにつれて、周囲が見えなくなり、自分の価値観や意見を押し通す傲慢な高齢による弊害です。
ビジネス上の使用としては、企業や政治の指導者層の円滑な世代の交代が行われないことから、組織の若返りが阻まれる状態を指します。
指導的立場にあり、キャリアの長い高齢者における「硬直した考え方で組織の活力が失われること」意味しています。
(2)職場における老害10選
すぐに感情的になったり、意地を張り価値観を強要することなどが、老害の大きな特徴です。間違いを認めないなどプライドが高い人や昔話が多く話がくどい人も、老害とみなされやすくなります。
実際の職場では、一般的に以下のような言動が、老害として敬遠されがちです。
- モチベーションが低い老害
役職定年や定年が間近であったり、既に昇進昇格のラインから外れているなどにより、現状の仕事で十分と考え、仕事に対するモチベーションが低い。
また、再雇用など雇用形態の変化で、完全にアルバイト的な意識に変化しているタイプ。 - 周囲の意見に対して全て否定的な老害
どのような意見や提案をしても、何か理由をつけて否定する。新しい取り組みにチャレンジする意欲がないタイプ。 - 意見を曲げない老害
協議の場では相手の意見を受け入れることはなく、かつ自分の価値観に沿った行動を相手に強要するタイプ。 - 感情的な言動の老害
自分の考えに沿わないものに対し、感情的な発言や行動にでて、相手を封じ込めるタイプ。 - 自分の好みや感覚で判断する老害
客観的な分析などによる根拠を持たず、自身の長年の経験や感覚、あるいは好みで仕事、人を判断するタイプ。 - 上司にすり寄り、部下に厳しい老害
上司の意見には従順に従い一方、手のひらを返したように部下には厳しい感情と根拠のない指示を強要するタイプ。 - 責任感がない老害
職位はあるものの、仕事に対する情熱や育成する気力がなく、退職までに事なかれ主義を通すタイプ。責任感の発生する業務や、部下のフォローなどを意図的に避ける仕事の進め方。 - 過去の実績や経験を強要する老害
20年、30年前の実績や経験に基づき、環境を分析することなく自己の価値観で指導を行うタイプ。自慢話の領域を超えないことが多い。 - 過去のやり方や結果に固執する老害
些細な業務でも、自己判断での結果責任を逃れるため、1年前、3年前、5年前、はたまた10年前、20年前まで資料や稟議書をさかのぼり、当時のやり方を模倣するタイプ。 - 今を否定する老害
最近の若者は、最近の業界は、最近の考え方はと、全ての情報をアップデートすることをあきらめているタイプ。さらに現在の取り組み方を根底で否定しているため、業務効率が極端に悪化し、フットワークの悪いチームが形成される。
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4.ソフト老害とは
「ソフト老害」は、放送作家の「鈴木おさむ」さんの造語です。
2023年1月に発売した著書「仕事の辞め方」で、自身の発言が仕事に及ぼす影響について「老害化」していることを認識し、32年間続けた放送作家の仕事を2024年3月に辞めることを決意されました。
著書では、「大切なのは40代でも行動次第では老害なんだ」という考えを、世の中に広めることが必要であると判断されたそうです。マンネリを捨てることで、働く意味、人生の目的、幸せのカタチが見えてくるといいます。
(1)ソフト老害に対する鈴木さんの想い
「老害」とは少し違う、40代の「ソフト老害」。
私たち40代の転職者においても、現職、あるいは転職先でも避けては通れないキーワードが誕生しました。
鈴木さんの、ソフト老害を認識する苦しい心の葛藤が、記事が掲載されていました。
鈴木さんのコメントになります。少し長めですが、自身に幕を閉じる重みのあるコメントでしたので、一部を掲載します。
①老害は60代、70代の話ではない
事の始まりは、とあるYouTubeチャンネル。『街録ch』という人気チャンネルをご存じでしょうか?
三谷三四郎というテレビディレクターが町中で、とんでもない人生を経験した人たちにインタビューするもので、これがとてつもなくおもしろい。
三谷Dは、元々お昼の番組『笑っていいとも!』のADさんで、そのあとディレクターになり、僕もいくつか番組を一緒にやっていたことがある。
三谷Dが、テレビから少し離れて、『街録ch』を始めてヒットし始めたときに、嬉しくて電話した。「良かったな、三谷」と言っても、なんかノリが悪い。あんまり嬉しそうじゃない。
その理由が一年後にわかった。
三谷Dとの一回も使われてないLINEに、いきなり映像が送られてきた。それはライターの吉田豪さんに三谷が逆インタビューされている『街録ch』の映像
まだ公開されてないが、ちゃんとサムネイルも入っていて、そこに「鈴木おさむを逆恨み」と書かれている。それを見て心臓の鼓動が速くなる。
そしてLINEの文章に、いきなりアップするのも卑怯だなと思ったので、とりあえず公開前に送ります……的なことが書いてある。
見てみると、僕ととある番組をやっていた時のこと。三谷たちが必死に作ってきた企画やVTRが僕の一言で、簡単になくなったり、直されたり。しかも、僕の意見をプロデューサーや演出たちが大切な発言として、受け入れて、その通りにしてしまう環境に対して激しくキレていた。
僕ら作家は10以上の番組を担当し、週に一回、番組の会議に来て発言する。ディレクターは一週間、その会議に向けて気持ちを込めて作り上げてくる。だが、それが週に一度そこに来た僕らの発言でひっくり返される。
三谷は僕に対してもですが、その環境を作り上げている「大人たち」や局にも問題があると提言していた。
見終わり、色んな感情がこみ上げてきたが、三谷にはこうLINEした。「おもしろいじゃん」と。
三谷はその言葉を求めていたらしく、その後のLINEの文面は急に穏やかになり、 結果、後日、彼のチャンネルに僕も出演して、自分の人生や思いを語った。
三谷のVTRを見て気づいた。これって、自分は「老害」の被害者側だと思っていたけど、加害者側に立ってたんだよなと。
自分も40代から老害の加害者側になっていたんだと気づき、40代から「ソフト老害」 は始まっているのだとわかった。
②自分の行動がソフト老害になっている
60代、70代の「老害」と40代の「ソフト老害」はちょっと違う。
40代になり、会議に出席し、自分が一番上に立つ。僕ら放送作家の仕事というのは、 誰かのパートナーになることが多い。
プロデューサーや総合演出と言われる番組を作る一番の責任者のブレーン的パートナーとなる。
自分の一言で全てが決まっていく時も数々あるし、時には、プロデューサーや総合演出の気持ちをアシストすることもある。
20代の時よりも、全体の「バランス」を取ることが多くなる。ただ、自分の発言力が大きいため、バランスを取っているはずの僕の言葉は、結果、若者たちが必死に考えてきたことを妨害することになっていた。
これ、どの会社でもあるのではないでしょうか? 40代になり、20代、30代とは違い、会社全体のことを考えて動かなきゃいけないポジションになる。
そのポジションに立ったからこそ、会社のことを考えて発言していること自体が若い世代からするとソフト老害になっていたりする。
そして、例えばそのプロジェクトがうまくいっている時はいいが、うまくいってない時。「上の人」からは、なんとかうまくいくようにツツかれる。
若い世代からは、自分たちのやりたいようにやりたいと言われる。こういう時に、自分は「上の人たち」とは違うよというフリをしながら、若者たちを説得するようにして、結果、走る方向を変えさせていく。あるあるだ。だが、これもソフト老害と言えるだろう。
誰も傷つかないようにとバランスを取っているつもりだが、20代、30代からしたらそのバランスを取っている行為が、妨害行為になっている。
良かれと思ってやっていることは、ソフト老害になっていることが多いのだ。40代は老害なんて関係ないと思いがちだが、40代から始まっているのだ。それを自覚した方がいいと本当に思う。
鈴木おさむ「僕も老害になっていた」 40代からのソフト老害とは|仕事の辞め方|鈴木おさむ – 幻冬舎plus (gentosha.jp)
「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です
(2)ソフト老害に対する世間の声
鈴木さんの自身に問う「ソフト老害」に対する回答と、その幕引きについては覚悟の上での判断だったと考えます。
しかし、世間の「ソフト老害」については賛否両論、様々な意見はありますが、むしろ先輩の意見を重視したいと伝わる内容のコメントが多い印象です。
私自身も振り返ると、若い時は「くそじじぃ」と思うほど憎たらしい上司もいました。そして、今は退職まであと何年と毎日数えているような方もいます。絵にかいたような「老害」と呼ばれてもおかしくない方がいることも事実だと思います。
5.ソフト老害化の考え方と自己対策
個人的な感想として、「ソフト老害」については時代の変化によって生まれ、言語化された表現だと感じます。
この記事を書くにあたり、今までの社会人経験を振り返ると、当たり前のように身近に沢山の「ソフト老害」がいました。むしろ、ソフトどころか40代にして「ハード老害」のような方も、沢山いたように思えます。
しかし、こうした鈴木さんの決意を受け、新たな「ソフト老害」というキーワードが世間に誕生しました。
私たち40代は、転職にあたりこの問題は整理しておく必要があります。それは面接時の質問や、入社後のアイドリング期間に顕著に表れてくるものと想定されます。
これまで「老害」と称されてきた行為・行動が若年化しものが「ソフト老害」であるならば、「老害行動」を再度認識し、意識的に回避していくたえの、スキルや考え方を持つことが賢明です。
以下、一般的な老害対策の逆読みです。特に転職後の不慣れなアイドリング期間、そして少し慣れて心が緩む時期は特に言動に注意が必要です。以下の行動を意識的に取り組んでいきましょう。
「ソフト老害対策」8つのポイント
- 自らのマネージメント力を高める努力を惜しまず、メンバーの育成・成長の支えとなる。
- 常にコミュニケーションが取れる環境を整備し、風通しの良い良くば環境を作る。
- アイディアや行動についてしっかり向き合い、話し合い、その上でチャレンジできる風土を作る。
- あやふやな回答をせず、しっかりと論理的に納得感のある結論を話す。
- 経験をもとにしたアドバイスや指示だけでなく、一緒に行動し結果を導く指導をする。
- 中間管理職としての職務を理解し、適切な評価と指導を行う。
- 適切にマネージメントを行うとともに、業務の責任は管理者が持つことを共有する。
- 過去の経験のポイントを共有し、相手に合わせた適切なアプローチを検討する。
- これまでの方法固執することなく、意見をまとめ、様々な手法でアプローチしていく。
- 良い理由、悪い理由を明確に伝え、お互いに納得の上で次のステージに向かう。
6.まとめ
鈴木さんの引退記事を読み、それから何度も自分と老害について考えました。
それぞれの立場や視点の違い、経験の違い、将来性の違い、その原因は本当に千差万別であり、受け手の個性によっても大きく意味が異なることと思います。
私は、まだ社会人になり始めの頃、幸い良い上司に巡り会うことができました。しかし、ここで記載した「老害」とされるような上司にも出会い、その都度苦しみ、転職を決意した経験もあります。
鈴木さんの引退までかけた最後のメッセージは、今後の企業の中核を担う30代、40代の世代への重要な提言だと思います。若い方の成長を促す役割は、間違いなく上司の役割だからです。
職人さんの世界のように、技術を何十年もかけ目で見て習得することも重要です。一方、適切な指導と支援を計画することで、もう少し早期に習得できるシステムも必要に感じます。
これまで見えていなかったこと、見てこなかったことが、どんどん発信され顕在化していきます。仕事における中間管理職の考え方も進化させなければいけませんね!
働くみんなが楽しく、そしてやりがいの持てる職場環境作りが、今も昔も変わらず大事なのではないでしょうか。
私も、「愛される老害」を目指して頑張ります(笑)