- 教員の欠員とは?
- 教員が減っている理由は何が原因なの?
- 少子高齢化と騒がれているのに、本当に教員不足なの?
- 教師になりたくない理由は、どういった内容が多いの?
全日本教職員組合などは、32の都道府県と12の政令市の公立学校や特別支援学校に対して、病気による休職や産休などの影響で教職員に欠員が出ている、「未配置」について調査を行いました。
その結果、驚くことに、病気などにより休職した教職員の欠員が補充出来ずに「未配置」となっている人数が、3000人を超えたことがわかりました。
そして、2022年度の教員採用試験の採用倍率が3.4倍になり、過去最低だったことも文部科学省の調査で明らかになりました。
1.本記事のテーマ
- 教員不足の定義
- 教員不足の現状
- 教員不足の原因
- 教員不足の対応策
2.著者の経験
これまでの主な職歴は、人材サービス業とコンサル業での勤務です。
人材サービス業では14年間勤務し、約3,500名の求職者のみなさんへお仕事をご紹介してきました。また、コンサル業では7年間人事業務に携わり、新卒や中途採用、教育・研修などを行ってきました。
3.教員不足の定義
「教員不足」とは、教員・臨時的教員等の講師の確保ができず、実際に学校に配置されている教員の数が、各都道府県・指定都市等の教育委員会において学校に配置することとしている教員の数(配当数)を満たしていない状態で、欠員が生じる状態を指します。(引用元;教員不足に関する実態調査 令和4年1月 文部科学省)
定義としては、上記のような表現になりますが、これにはおおきく2つの種類の不足があります。
- 量的不足
これは、文字通り教員が10人必要な学校に6人しかいない、などの物理的な人員不足のことを指します。 - 質的不足
こちらは全く異なった意味で、教員が10人必要な学校に10人に教師はいます。ただし、その実態としては本来数学を教える先生が、専門性をあまり持たない他の科目を教えていたりするケースです。
他、数としては1人ですが、教師歴の浅い新米教師の方である場合、その対応力は1人分を望めません。むしろ、社会人としては「教育される側の立場」の人材が、いきなり担任を持っているケースなどです。
4.教員不足の現状
現状の教員配置情報については、文部科学省が2022年1月、全国の公立小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(計3万2903校)を対象に、実態調査した結果が参考になります。
その調査によると、教育現場に本来配置されるはずだった教員人数から、実際の配置人数を引いた欠員数は、小学校979人、中学校722人、高校159人、特別支援学校205人で、合わせて2065人にのぼりました(2021年5月時点)。
文部科学省は「義務標準法」などをもとに各学校の教員定数を決めています。
ちなみにこの2021年5月時点では、全国の公立小中高校・特別支援学校に計83万7790人の配置が予定されていました。
欠員数は当然ですが、年度中にも変動します。
年度の初めは一般企業の転勤なども多く入学児童数が増加し、結果として学級数自体も増えたりします。
一時的にクラスが増えた場も、担任・副担任などの配置が必要になり、教員不足が発生します。
教員不足の流れを簡単にまとめると、以下のようなイメージです。
不測の教員不足に対応するため、県などの教育委員会は正規の雇用に至らなかった候補者を集め、候補者リストを作成します。いざ欠員が生じた場合はこのりすとから順に声をかけ、優先的に臨時職員として採用します。
配属されている職員が休職・退職をするケースは様々です。
病気や出産などのほか、近年はクラスや保護者のハラスメントによる精神疾患も多く、そうした場合も含め、大半は突発的に欠員が発生します。
以前までは教員になりたくてもなれないという時代が続いており、正教員は狭き門でした。
そのため、ひとまず採用候補者リストに名前を登録し、正職員の空きを待つスタイルが確立しました。しかし、新型コロナウィルスの5類移行などもあわせ、民間企業の採用が活発化すると、一般的に公務員の志望率(受験率)は低下します。
その結果、職員採用試験自体の倍率が低くなり、「教員合格者が増える」=「不合格者が減る」という構図になり、採用候補者リスト自体が数・質ともに低下しました。
これまでの流れを受け、2024年10月1日の時点で「未配置」となっている教職員の数は、3112人にのぼったという発表につながります。
この数字のうち、候補者リストから補充に至ったのは8名であり、対応できていない285名、校内の職員で掛け持ちなどを含めなんとか対応するなどが252名となりました。
未配置の状況(なんともならずそのまま欠員)は前年度も決して少なくはありません。
前年度は1,698名、本年度は138%アップの2344名です。改めて深刻な教員不足の実態が明らかになりました。
想像通りですが、正職員として配属後の4月に一日でやめてしまう職員や、1か月程度でやめてしまう職員も多いのが現状です。
民間企業でもよくあることですが、ブラック企業体質です。満足な教育や指導も行われず、大学程度を卒業したての学生にクラスを持たせ、更には親御さんの対応にまであたらせるのは無謀です。
若い職員(先生)の方は、総じて能力がとても高いと私は思います。その成長を阻害せず、育成していく仕組みをなぜ作らないのか疑問です。
各県の教育委員会はもっと良い民間企業を参考にし、人材育成のプログラムを学び実践する必要があると強く思います。
5.教員不足の原因
一つ前でも軽く触れていますが、全国的に教員が不足している根本的な原因は、何なのでしょうか。
NHKによると、そもそも文科省による実態調査は、2021年度から公立小学校に小規模単位の「35人学級」が導入され、これによって新たに大量の教員が必要となったことが背景にあることがわかりました。
しかし、35人学級制度は安易に否定できるものではなく、児童の個性に応じたきめ細かな教育を実現するために重要であり、「誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの可能性を引き出す」ことを目的とした、意味のある制度だいう言葉にはとても納得のいく制度だなと感じます。
他、教員が仕事と家庭を両立させ、安心して働ける環境作りが必要となり、特別支援学級の整備もまた、個に応じた教育に不可欠な制度です。
教員不足の主な原因として挙げられる、①35人学級、②産休・育休取得者数の増加、③特別支援学級数の増加、④病休者数の増加、が挙げられます。この内容を整理したいと思います。
(1)35人学級の導入
公立学校の学級編成などを定める義務標準法が2021年に改正されました。そして公立小学校の全学年について学級人数の上限を40人から、段階的に5年をかけ35人に減少させ、「35人学級」制度が全学年に適用されていきました。
これに伴って、必然的に全国で新たに大量の教員を確保する必要が生じました。
読売新聞によると、35人学級を完全に実現するためには、少子化を考慮してもなお5年間で1万3500人以上の教員が必要とされています。
日本の教育現場は、他の先進国と比べて1学級あたりの児童生徒数が多いことは以前から指摘されていました。ざっくりというと他の先進国は30人前後のクラスなのです。日本より学級の規模が大きい国は韓国、チリなどごく一部の特殊事情を持つ国だけでした。
少人数学級は長年の学校現場の夢でもありました。しかし、そこには「教員不足」という現実問題がはばかります。
教員不足の主な原因と流れ
- ①団塊の世代(第2次ベビーブーム世代)の教員が大量に定年退職→②教員の若返り→③産休・育休による求職者の増加。
- ①特別支援教育を受ける子どもの増加→②特別支援学校・学級への手厚い人員配置が必要→③負担増による病気休職者の増加。
(2)産休・育休取得者数の増加
他の民間企業と同様に、教育現場を支えた大半の教員(団塊の世代の教員)が次々に定年退職し、世代交代が発生しました。
これによって新採用の若手教員が増えたため、職場の若返り化がすすみ、結果として教育現場で産休・育休を取得する教員が増加しました。
日本経済新聞によると、1970年代の第2次ベビーブームへの対応で大量採用された教員の多くが定年退職の時期を迎え、若手教員の採用が増えています。
国の施策も相まって、今後は男性職員の育休取得率も増加していくことが十分に想定されますね。
(3)特別支援学級数の増加
少子化で児童・生徒が減り続ける一方、特別支援教育を受ける児童が増え、その対応を担う教員が足りなくなっています。
文科省によると、特別支援学校に通う児童・生徒数は、2009年度の約6万2000人から2019年度には約7万5000人に増加しました。また、小中学校の特別支援学級に通う児童・生徒数も、同じ期間中に約13万5000人から約27万8000人へと倍増しています。
特別支援学校や特別支援学級は、1学級6〜8人、あるいは1学級3人が定数の場合もあるため、教員の確保はより喫緊の課題になっています。
特別支援学校と特別支援学級の違い
- 特別支援学校(支援度高)
特別支援学校は、大きな病気を患っていたり心身に障害を抱えていたりする児童が通う学校です。幼稚部から高等部まであり、それぞれにあった教育を受けながら、生活上の自立は図るための能力や知識を身につけます。
特別支援学校は1クラス児童が4〜5名に対して教員が2名くらいつきます。 - 特別支援学級(支援度中)
心身に障害を抱えた児童のために、通常の小学校や中学校にある学級です。常に特別支援学級にいる児童もいれば、特定の授業や時間だけと個別支援学級で勉強をする児童がいます。
特別支援学級は、1クラス児童が8名に対して教員が2名くらいです。
(4)病休者数の増加
文部科学省によると、教員の病気休職者数は一般社会と同様に、高止まりの状態が続いています。
精神疾患による病気休職者の推移をにかけてみてみると、2016年度から2020年度はそれぞれ4,891名、5,077名、 5,212名、5,478名、5203名と、平均すると概ね5,000名前後の求職者がいます。
うつ病など精神的な病気が原因で休職する教員が増え、こちらも6,000名にせまり過去最多となりました。
文科省はその背景について、「コロナ禍での行事など、難しい判断が必要な業務が増えている影響も考えられる」と分析しています。日本教職員組合が2022年に行なった調査によると、一日の休憩時間が「0分」と回答した公立学校教職員は40.6%に上り、2021年の32.5%、2020年32.0%から大幅に増えています。
学校全体のガバナンスであり、教員を守る機能が全く果されていません。
私は教員に対する特別感はありませんが、いち企業として考えると、TOPである校長、各県の教育委員会、文科省は何をしているのか疑問でしかありません。
これでは、優秀人材からどんどん退職され、制度の整った私立学校への転職は当たり前に思えます。
6.教員不足の対応策
これまでのような慢性的な教員不足は、信頼できる担任がいない、クラスの指導・リーダーシップを発揮する指導者が安定しない、授業の質が低下するなど、様々な悪影響を引き起こします。
教員自身も心を病み、憧れて学んでついた職業であるはずなのに、リーダーシップが取れない上層部により、職場はブラック企業化しており、退職を余儀なくされてしまいます。
そして、それは全て子どもたちの不利益につながります。現状を改善するにはどうすればよいのでしょうか?
(1) 教員を目指す環境の再整備
ひとつは、そもそも分母(教員数)を増やすことが、最重要です。
教員になりたくても慣れない環境下の学生等に対し、もっと働きかけを行う必要があります。
施策としては、教員免許を保有または取得見込みの学生に対して、教員採用試験の方法の緩和であり、教員になった場合に奨学金(日本学生支援機構)が返還免除となる仕組みなどが有効です。
また、すでに教員免許を持つ社会人に対し、近年一般的となりつつある副業としての働き方や、登録講師的な勤務の仕方を推進するシステムがあれば有効かもしれません。
(2)働き方改革の推進、外部からの自己改革支援
これだけ教員は大変だ、ブラック企業だと思われている中、ただ待っているだけでは万が一にも応募者は増えません。
某農業団体もそうでしたが、自らを律して制度や企業目的を変革できない組織には、外部からのコンサルなどを導入し強制的にシステムを変更するしかありません。
生徒をはじめ、教育者である教員自身がやりがいを持ち、向上心を持ち続けられる職場に変換させる必要が急務です。
私も二児の親ですが、過剰に学校や先生に介入する方もいます。我々親御もしっかりと学校の事は先生に任せ、余計な口を挟まない姿勢が必要です。
また、できない組織にありがちな無駄な縦社会による古い考え方、進め方、非システム的な仕事の仕方など、抜本的な改革を進める必要性と、多分過ぎるほどの改善余地があると思います。
(3)改革に必要な予算と人員の配置
まずは、一定の安定を取り戻すために必要な資源(人、物、カネ)の投資が必要です。
教員制度の回復は、日本の国力向上に必要不可欠です。経済の活性化、既婚率の向上、子供の増加など、教育の与える影響は限りがないものだと思います。
外交にお金を使う必要性も否めませんが、教育については日本の本丸だと認識しています。
私は決して政治家でもなければ、教員擁護の立場ではありません。
ただし、この記事を書くにあたり調べていると、これほどまでに教員の皆さんが疲弊し、ここまで努力し頑張って教員になったのに、すぐに退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまう教員がいること、それを救おうとしない組織がなお継続していることに違和感を覚えました。
そして、自身の子供が話していた「急に担任の先生がこなくなった」が、とても身近で現実的なことに改めて気が付きました。
私個人のできることは限りがありますが、少しでも力になれることがあれば、是非応援したいと心から思います。
もし、このブログをご覧になられ、同じような気持ちをもっていただけたら嬉しいです。
まだお若い先生の皆さん、私は信じていますので、自分の信念をもってこれからの若い生徒を引っ張って行ってください(^^) もし、うちの息子がおかしいことをしたら、グーで殴っていただいて全然問題ありません(笑)
なんか、今回は書いていてどんどん気持ちが出てしまいました。反省。。。